アフガニスタン遠征：サファヴィー朝の衰退とイランの国際的地位の変化

18世紀、イランのサファヴィー朝は、かつての栄華を誇っていたものの、内部的な混乱と外部からの圧力に直面していました。帝国の弱体化は、周辺諸国にとって魅力的なターゲットとなり、その中でもアフガニスタンのドゥッラーニー朝がイランの支配領域を狙い始めました。

1722年、アフガニスタン王アハマド・シャー・ドゥッラーニーは、大規模な軍勢を率いてイランに侵攻を開始しました。このアフガニスタン遠征は、サファヴィー朝にとって深刻な危機であり、その結果、イランの政治的・社会的な風景は大きく変化することになります。

サファヴィー朝の衰退には、いくつかの要因が複合的に作用していました。

王権の弱体化: サファヴィー朝は、17世紀後半にスルタン・フセインによる専制政治が始まり、王室の権力が強化されてきました。しかし、その後の君主たちは能力不足で、中央集権体制は徐々に崩壊していきました。
経済的な不況: 長引く戦争や干ばつなどの影響で、イランの経済は疲弊していました。農業生産が減少したことで、税収も減少し、国家財政は悪化しました。
宗教的対立: サファヴィー朝はシーア派イスラムを国教としていましたが、スンニ派の住民も多く存在していました。この宗教的な対立は、社会の分裂を招き、帝国の安定を脅かしていました。

これらの要因が重なり、サファヴィー朝は国内外で多くの課題を抱えていました。アハマド・シャー・ドゥッラーニーは、そのような弱体化したイランの状況を見抜き、侵攻を決意したと考えられます。

アフガニスタン軍は、イランに進撃し、首都イスファハーンを陥落させました。サファヴィー朝の王ターマス・1世は、逃亡せざるを得ませんでした。その後、ドゥッラーニー朝はイランの多くの地域を支配下に置き、サファヴィー朝の勢力を大きく削ぎ落としました。

しかし、アフガニスタン軍は、イランの広大な領土を効果的に統治することができませんでした。また、サファヴィー朝の残党勢力は抵抗を続け、イラン各地でゲリラ戦が繰り広げられました。この混乱の中で、イランはさらに弱体化し、周辺諸国の介入にさらされることになります。

アフガニスタン遠征は、イランの歴史において大きな転換点となりました。サファヴィー朝の衰退は、その後アッバース朝が成立するなど、イランの政治体制に大きな影響を与えました。また、イランの国際的地位も低下し、周辺諸国との関係にも変化が生じました。

さらに、アフガニスタン遠征は、イラン社会に大きな衝撃を与えました。戦乱の影響で、多くの住民が亡くなり、生活環境が悪化しました。宗教的対立も激化し、社会の不安定さは長引きました。

アフガニスタン遠征は、18世紀イランにとって重要な歴史的事件であり、その影響は後世にまで及びました。サファヴィー朝の衰退とイランの国際的地位の変化は、イランの歴史を大きく変え、現代に至るまでのイランの政治・社会構造にも影響を与えていると言えるでしょう。

表：アフガニスタン遠征の主要人物

人物	所属	役割
アハマド・シャー・ドゥッラーニー	アフガニスタン・ドゥッラーニー朝	征服者
ターマス・1世	サファヴィー朝	被征服者